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コラム コロナ禍に想う

◆コロナ禍を生きるに必要な文化。芸術。芸能の力

※コロナ禍を生きるに必要な文化・芸術・芸能の力~
 徳之島から戻って数日たった2021・3・13(土)の目、1週間ぶりに毎日新聞の夕刊(文化欄)に日をむけた。
 《ぶんかのミカタ》のコーナーに「今を生きる宮本常一上」という大きな見出しで、宮本常一記念館の学芸員の文章が掲載されていた。学芸員の名前は高木泰伸(たいしん)さん。記憶にある名前だ。
 しばらく宮本の生まれ在所。周防大島に足を運んでいなかったが、あの高木さんだとよみがえってきた。顔写真もあり、まちがいない。さっそく記念館に電話を入れた。他の用で手を離せないと館の電話に出られた方が言うので、伝言を頼んだ。しばらくして、高木さんから電話がかかった。童顔のやさしい面影が電話国の声をききながら、すぐに浮かんだ。わたしのことをはっきり覚えてくれていた。
 「きのうの新聞のあなたの寄稿文を読んで,・・」これで十分だった。
 館内の展示物を見て回り(特に《木組み》が印象につよく残っている)宮本が遺した直筆の原稿、膨大な写真群、書物などのことをおもいかえしながら、高木さんと話をした。たくさんの人が訪れ、応対する学芸員だ。一人ひとり覚えているとは言えない。が、わたしのことは記憶されていた。その頃は、山口県の祝島に通っていた頃である。標記の寄稿文にも書かれている。
 ――10年前の東日本大震災の後、記念館には20代、30代の人が訪ねてくるようになった。学生や研究者だけでなく、都市部の会社員や中山間地の公務員、農家の青年など、それまでにはあまり見かけない層だった。聞けば宮本常一に会いたくなったのだという。何となくわかるような気がした。原発建設問題に揺れる山口県・祝島を訪れた帰りに立ち寄って自然と共生できる生き方を考えたいという人や、自分の故郷の姿をもう一度振り返ってみたいという人もいた」―一
 このように高木さんは書いている。彼の仕事が終わるのをまち、近くの居酒屋で話し合ったこともある。
 上に引用したあとに、高木さんは、次のように書いている。
 ――当たり前と思っていた価値観が揺らいだあの時、宮本の思想に一筋の光を見出そうと、私もその著作に向き合った。宮本は戦後の農山漁村の新しい在り方、高度経済成長期の過疎問題にも正面から向き合った。そして、地域の資源を生かし、伝統を尊重し、共同して困難を克服しながら暮らしを豊かにする人たちの姿を今日に伝えている一―
 そうなのだ。この東北大震災後の「困難」をどう乗り越えるかということに悩んだとき、庶民の暮らしに視点をすえ、とくに村のわかい人たちに「村にある文化財に目をむけよ、それを絶やすな」と叱咤した宮本の姿が鮮明によみがえる。コロナ禍にある今日、なにに依拠してこの困難な中を生きていくかを考えた時、やはり宮本の積み上げてきたものに真剣にむきあうことの大切さがしみじみ感じられるのだ。
 電話で高木さんと「再会」したわたしは、できるだけ早く、周防大島に足を運ぶことを高木さんに約した。
                  ○
 翌日の毎日新聞(朝刊)の8面文化欄「語る」に、大原謙一郎氏に記者須藤唯哉がきいたことをまとめている。大原氏と言えば、かの有名な大原美術館の名誉館長だ。白髪の優和な笑顔が大きくでている。記者はリード文でつぎのように書いている。
 ◇学問や文化、芸術などに親しむことで人類が育んできた「人文知」。文化人や財界人らによって設立された団体「人文知応援フォーラム」は、2月に「第1国人文知応援隊」を開いた。団体の設立目的や人文知の果たす役割などについて、同フォーラム共同代表を務める大原謙一郎・大原美術館名誉館長に聞いた一―
 大原氏はこれまで歴任してきた団体などの活動をとおして「歴史や哲学など人文系に対する世の中の興味関心が低くなっていると感じ、それだけ日本が薄っぺらな国になっているのではないかと危機感を持ち」「人間文化研究機構長の平川南さんや日本経団連名誉会長の榊原定征さんらに相談したところ、《それはいいことだ。みんなでやろう》という話になりました。応援フォーラムは2019年10月に設立され、元文化庁長官の近藤誠一と私で共同代表を務めています――
 このフォーラムの運営委員には、美術評論家の高階秀爾さん、小説家の林真理子さん、生物学者の福岡伸一さんら各分野で活躍する文化人が顔をそろえていますと記者はおさえた上で、大原氏に説明を求めている。
 ――新型コロナウイルスの感染拡大で(大掛かりなものは)断念しました。そこで今年2月27日にウエブで約300人が参加し、お祭り騒ぎにはなりませんでしたが、中身の濃い大会になってよかった――
 第1回応援大会では、政治学者の五百旗頭真さんや歴史学者の磯田道史さんらが、それぞれの専門分野や経験からコロナ禍を考え、発表しました。さらに大会宣言では「人文知を混迷する時代の《羅針盤》と位置づけ、人類社会の発展に必要なもの」と訴えて採択されました。
 ◇そもそも大原さんの考える「人文知」とは何ですか?
 ――美しい芸術やエキサイティングする映画や演劇、あるいは歴史などに親じむことで、表面的なものではないI腹の底から湧いてくる知恵があります。そんな人文学的なことを学ぶことで自然と心の中に生まれてくる知恵が人文知だと思います。人文知は社会をつくる上で必要です。コロナ禍や世界的な新興勢力の台頭、宗教的な対立などの現実を見れば見るほど、腹の底から湧いてくる知恵をしっかり持っておく必要があると感じでいます。おそらく自然科学の研究者にとっても人文学的な知恵は、大事なはずです。(両者が)交流することで互いにヒントや刺激を得てきたでしょう――
 ◇ここで記者は次のように問いかけている。
 しかし、人文系の学問に対する世間の風当たりは強くなっています、と。
 この指摘にたいし大原氏は次のように応じている。
 ――化学メーカーの「クラレ」勤務時代に新規事業や研究開発を担当したことがあり、世界のクリエイターたちと付き合ってきましたが、みんな人文的な知恵を持っていました。オペラを語らせたら一晩中語り尽くしたり、自らフルートを吹いたり、そういう人たちばかりなんですよね。そんな人たちと勝負しながら昼間の交渉の席だけでなく、夜の会食などの個人的な付き合いの席でも腹を割って話をする。そんな人材を育てていかなければ、日本は世界で後れを取ると昔から考えていました。/日本が民主主義国家として世界の中で自らの立場を主張していくためには、民主主義の基本をきっちり押さえなければなりません。応援大会では登壇者から「リベラルデモクラシー(自由民主制)が劣化しているところにコロナ禍が起きた」との指摘がありました。その流れの中で、リベラルデモクラシーとは違う考え方の社会にも力があるのではないかとの見方が広まってしまったら、これからの世界は闇です。だからこそ、 リベラルデモクラシーに力を持ってもらうためには、人文学的な知恵をもっと掘り起こしていかなければなりません一一
 この対談を終え記者の須藤さんは、次のように振り返っている。
 ◇「戦後日本の立ち直りを築いたのは、日本の人文知だった」。大原さんは日本が敗戦からいち早く復興した背景には、知の交流によって育まれたアメリカとの信頼関係があったと強調した。今、世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるい、経済的な格差や価値観の違いによる分断が進むなど多くの課題を突きつけられている。効率化や短期間での成果が求められる現代社会のなかで時間を要して醸成される人文知は軽視されがちだが、実はさまざまな課題を乗り越えるヒントが隠されているのではないかと思う。
 記者はこうしめくくり、フォーラムの今後に期待する気持ちを書き記している。
 大原氏はこの対談では発言の中に学術会議のことにはふれていないが、昨年菅内閣が発足するや、5人の人文学系の研究者が学術委員の任命をはずされていることにも、きっと危機感を抱いているはずだ。
 理系の基礎研究費をけずり、応用研究に特化した研究費への傾きをあらわにする今の支配側の姿勢に、大原氏は危機感をいだいていることだろう。「人文知」とは、まだ聞きなれぬ言葉かもしれないが、人文科学軽視のありようにストップをかけないと、これからの科学立国はとうていおぼつかない。
 そこで、自然科学を専攻し、「生命誌」の学術をふかく追究している理学博士。中村桂子さんに登場願おう。
 3月12日の毎日新聞夕刊に中村さんは登場している。「この国はどこへ」という連載である。大きな横見出しで、「ウイルス引きずり出した人類」とある。どういうことだろう。鈴木美穂記者による対談のまとめだ。

 中村さんは、遺伝情報を扱うグノム研究を経て「生命誌」を提唱する理学博士(85歳)。
 ◆生命誌とは、人間を合むさまざまな生きものの関係や歴史を整理し、私たちが「どう生きるか」を探るための学問。地球上には数千万種もの生きものが生息するが、その共通性や多様性を「ゲノム」をキーワードに解き明かしていく。私たちはどこから来て、どこへ行くのか――。それが課題である。これが中村さんの研究の基点である。
 鈴木記者は、さっそく中村さんに尋ねる。◆新型コロナウイルス`悪者″ではないのか、と。
 ――すると中村さんは苦笑しながら、次のように話し始めた。「感染したら困るのはもちろん困るのよ。
“良い子”とは言わないけれど、生きものとウイルスは大昔からのお付き合い。細胞のあるところにウイルスあり、ならばうまくやっていきましょうよって」―一
 この出だしで、「ウイルス悪者説」をしりぞける。自ら考案した「生命誌絵巻」をそっと記者に示した。
 「生物学の世界では下等生物や高等生物という分類はもうしていないの。『進化』というと、どうしても立派になっていく道筋ととらえがちでしょう。でも、アリとライオンを比べて『どちらがすごい?』と聞かれても答えようがない。・…そこには、ただ懸命に生きる姿があるだけで、優劣はないのですから」
 人間とウイルスの関係も同じだと。(多くの論者とはちがう観点で語られる中村さんの話に耳を傾けよう)
 「新型コロナは、人間が生きものであることを再認識させました。生命誌の視点では、コロナウイルスの自然宿主たるコウモリと人間は同じ哺乳類。ウイルスが増殖する場として、互いに近い仲間です。そして、ウイルスも人間も続こうとしている。その姿をとらえ『戦い』と表現するのはちょっと違うのでは。ましてや『人間様は偉いのだからウイルスを駆逐できる』などと考えるのは人間のおごりではないでしょうか」
 ◆では、そもそもウイルスとは何か?中村さんは次のようにいう。
 ――「ウイルスとは、『動く遺伝子』と説く。彼らは生きもの界をダイナミックに動いてきました。生きものが環境変化に対応しながら命をつないできた中で、時にウイルスが細胞の性質を変えてきました。つまリウイルスは、生きもの界のダイナミズムを支えてきた存在と言えます」(とはいえ、コロナが厄介な病原体であることに変わりはない。いわく「どう消すかでなく、どうおとなしくさせるか。ウイルスとのお付き合いは結局そこに尽きる。傲慢な人間中心主義ではなく、今後は少し謙虚に人間尊重主義といきませんか
 ◆そうは言われても、これまで人間は20世紀後半以後、従来見られなかったウイルス感染症の出現に悩まされてきた!
 ――「エマージングウイルス」である。1976年にザイール(現コンゴ民主共和国)でエボラ出血熱が流行し、80年代半ばにはエイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)が出現した。近年は、コロナウイルス由来の重症急性呼吸器症侯群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)が現れたが・・・
 ◆ここまで頻発するのはなぜだろう?
 ――中村さん曰く「過度な利便性や物質を求めた人間の行動様式がこの事態をもたらした。ウイルスは細胞を持たないため、宿主の生物がいなければ生きていけない。本来は相手(宿主)が病気になったり、死んでしまったりしては困るのです。森にいたウイルスの多くは、長い時間をかけて弱毒化するなどし、近隣の動物たちと平和共存してきましたそこに突然、開発の名のもとに人間が踏み入り、ウイルスたちを都市に引きずり出してしまいました」「進歩拡大をよしとする競争社会というものが私たちに真の幸せをもたらしているでしょうか。私には、新型コロナの流行が『人類よ、考えよ』いう自然界からのメッセージに思えます」(以上の波線、二重線、ゴチックは引用者・下橋による。以下もおなじ。)
 まさに自然界から警告が発せられたというべきだろう。人間界が「いいように」「人間の利益のみを追求した結果だ」と、中村さんは指摘しているのだ。ここに立ち止まりたい。

 中村さんは、ワクチン開発についても、その後言及している。
 ◆人類に「光」を届けるワクチン開発は、異例のスピードで進んだ。英米など先進国を中心に接種の動きが広がる反面、途上国では入手困難になるなど新たな「格差」を生んでいる。中村さんは苦悶の表情だ。
 ――「科学者が『ワクチンや治療薬の開発を一番乗りでしたい』と努力するのは当然で、今回も新型ワクチンを生みました。ただ、人類の共通課題を克服するのが目標である以上、一部大国や大手製薬会社が成果を独占する形ではいけない」SARS,MERSに続き、新型コロナで3回目だ。2003年にSARSが爆発的に広がった時、世界保健機構(WHO)は世界9カ国。11研究所による国際共同研究体制を作り、日本からは国立感染症研究所が参加した。原因がコロナだとチームが特定したのは、わずか1ケ月後のことだ。「残念です。今回はそうした動きがあまり見られませんでした。競争を捨てた協力体制が早くから確立されていれば、人類の未来にもっと明るい材料ができたはずなのに」
 ――(中村さんは記者の問いかけをうけてアメリカ女性学者、バーバラ・マクリントック氏の「トウモロコシつ粒の色が変わるのは遺伝子が動いているから」と突き止め、晩年にノーベル賞を受賞したことに触れた後)「つまり研究とは、目的のために他者を蹴落としたり、成果を独り占めしたりすることでなく、自己の信念に従い、発見を楽しむものだと私は思うのです」と述べた上で、「現代を生きる私たちは『分からないことを、分からないままとらえることが不得手』だと。さらに、「生き物の世界は機械仕掛けのように予定調和では済まない。なのに、すぐ分かった気になったり、専門家に知識の伝達を求めたりする。本当に大切なのは考え方だと思うの。ちなみに、専門家とは『どこまで分かり、どこから分からないか』を知る人たちのこと。新型コロナウイルスには未知のことが多い。人類や地域によって罹患数や死者数にこれだけの差があるのはなぜか。ウイルスは今後どのように変質するのか。今もつかみ切れ
ていません」(この後、ワクチンについて中村さんはさらに言及している)
 しかし、テレビなどで感染症の専門家という人が毎日のように登場し、答えにくそうに話しているが、中村さんのいうように「未知のことで、まだまだ分からないことばかりだ」といったことを言うことが禁じられているような感じがする。回答していても、苦しげだ。「むしろ分からないことの方が多いのです」と言えたらどんなにいいかと思わせられる場面が多すぎる。
 記者は最後に、「感染症対策の極意」について質問を投げかけている。
 ――「一にも二にも手洗い」と即答し、重ねてこう力説した。「手洗いは誰にでもできて、しかも感染予防に有効ですから、『私がやっても仕方がない』と思ってはダメです。一人一人の行動が、自分だけでなく、誰かを守ることにもなり、世界的流行を食い止める。これってすごいことですよね。個々人の行動がダイレクトに陛界とつながっていると実感できるのですから。ステイホーム中も私は一人じゃないと、世界とのつながりを日々感じながら、手を洗っています。人と接する時はマスクをして、ね」
 わたしの家には来客がよく来る。そのおり、「はい、手洗いを|」と促す。若いのは「ハンカチ」というのを持っていないことがある。タオルを渡す。手洗いのとき、わたしは在宅であれ、戸外であれ、かならず石鹸をつかう。使わないことはない。習慣になっているからだ。朝のうがいは丁寧にする。コロナ禍であろうとなかろうと。そのうえで、洗顔のあと、「三つのこと」を実行する。①黒ニンニクー片 ②マヌカノ`ニー小さじに少々 ③バナナー本ないし半分(ただし、両端を切り捨てる) これを称して「三蜜」という(「三密」ではない)。これで免疫力をあげる。早寝早起き(9時半布団に入り、眠くなるまで本を読む、眠くなればすぐに寝る。遅くても10時半就寝を心がけている。)夜中に目が覚めた場合は、つづきを読む。このようにして読み上げた本はかなりある。資料としての読書はこれにかぎらない。「読むこと」を目的にした場合は、一冊目を通す。途中眠くなれば、また寝る。7時前後には起床。朝食、洗濯・干し物、温めがいる食べ物は電子レンジをよく使う。レンジが動いている間にスクワットをする。最近は肩こりがでてきたので、両腕を前から後ろに回すこと10回、さらにこれからは「懸垂」風に腕をのばし、肩から下の筋肉痛をほぐす体操もすることに。免疫力をあげる、規則的な生活習慣を守り実行する。これぞしもはしのコロナ対策。
                  ○
 上で、『人文知』「自然科学知」についての論客の発信を多く引用してきた。ここで視点をかえ、コロナ禍で「自殺者」が増えていることを問題として取り上げる。
 2021年3月17日の毎日新聞が16月に厚生省から発表された2020年の自殺者数「確定値で前年比912人増の2万1081人と報じた。男女別では、男性が1万4055人(同23人減)で減少が続いた。女性は7026人(同935人増)と全体を押し上げたと。新型コロナウイルスの感染拡大による経済状況の悪化や家庭・教育環境の変化で、女性や子どもが影響を受けたとみられると報じている。昨年は、緊急事態宣言期間の4~5月を合め、上半期は減少が続いたものの、7月以降は増加。以下細目が出ている。
 職業別では「被雇用者。勤め人」の自殺者数は6742人(同540人増)で女性は389人増えた。「学生。生徒など」の自殺者数は1039人(同151人増)で女性の増加は118人。小中高生の自殺者数は499人で、統計のある80年以降、最多だった。また、原因や動機が特定できたのは1万5127人。うち「経済・生活問題」は3216人(同179人減)だった。
 他方、3月23日の毎日新聞朝刊が「影落とすコロナー斉休校」の見出しで、昨年3月にコロナウイルス感染拡大を受けて始まった全国一斉体校から1年たったことを踏まえて、リード文で千脇康平、田中理知記者は「安倍晋三首相(当時)の突然の要請で最長3カ月にも及んだ異例の措置は、子どもたちの学習や心身に影響を及ぼし、今後もそれらが表面化する可能性がある。世帯間の教育格差も浮き彫りとなり、専門家は対策を呼びかけている」と書いている。その記事の中に出ている「検証」記事から、先の「20年度自殺者数」でも触れていたことと重なるが、「学習格差や孤立広がる」の見出しに端的に示されている実態を、必要と思われる点に絞ってここに採録してみる。
 *(記者によると)ある教育委員会の担当者の打ち明けた不安として「体校明けに授業時数を確保するため、授業のスピードが上がり、ついていけなかったり学習内容が定着していなかったりする子どももいるはずだ。これから表面化する可能性がある」と。
 *一斉体校を機にオンライン授業を取り入れた学校も少なくない。(ある東京都の高校・付属中学は、オンライン整備を進め、教員向けの研修を開いて導入し、9月末までに授業の遅れをほぼ解消できた、という)(緊急事態宣言が再発令された今年1月からは学年ごとにオンラインと対面授業の日を交互に設けて対応した。だが、この学校の女性校長は「学習の進み具合などの面で格差は広がったかなと思う」と憂慮する。「通学時間がなくなった分、勉強ができる時間が増えたという生徒がいる一方、見ていてあげないと勉強が進まない子もいる。こばれ落ちそうな子のケアは今後もやっていく必要がある」と。)
 *遅れた授業震度を取り戻すのに、学校現場は汲々としている様子が、わたしにも伝わってくる。「もう、大変です」という声が届くのだ。通年だと9月の2学期開始の日に「生徒の自殺者が1年でピークをなす」と明らかにされてきたが、コロナ禍の昨年では、やや日常化していると言えそうだ。文科省によると、昨年1年間で自殺した小中学生。高校生は前年比140人増の479人(暫定値)で過去最多を更新した。高校生では特に女子が前年の約2倍に急増した。文科省の担当者は「前年までであれば踏みとどまっていた子どもたちが、『コロナ禍』による先行きの不透明感や社会不安によって自殺に至ってしまった可能性がある」とみる。
 *この点に関連して、中原敦・立教大学教授と研究スタッフらの「学びを支えるプロジェクト」は、昨年5月、体校が続いていた東京など首都圏の4都県に住む高校生(760人)にウエブアンケートを実施した。
 「友人」との「コミュニケーションが十分できている」と回答した割合は24%、「教員」とは9%にとどまった。悩んだり困った時に支えてくれる人がいないという生徒が2割程度いた。記者は、体校でコミュニケーションが希薄になり、孤立していた生徒が一定数いたことがうかがえる、としている。
 一方、この日の記事では、「一斉体校中の子どもの勉強への集中力は?」という題で掲載した「世帯所得別」の横棒グラフ(昨年6月:三菱UFJコンサルティングの調査による)を掲げている。それによると、「勉強ヘの集中力」がかなり低くなっている割合が多いのは、年収200~400万未満世帯が一番で、400~600万円未満の層がそれに次ぐ。とりわけ「1人親家庭」が「かなり低くなっている」が40%、「やや低くなっている」が17・5%で、二つを合わせると「変わらない」の16。7%より群を抜いている。一方、「夫婦と子」家庭では「かなり低くなっている」が4割を超えている。「やや低くなっている」が28%、合わせると5割以上だ。やはり三世代家庭との差がはっきりと出ている。これらの統計をふまえ、「一斉体校。低所得世帯への負担鮮明」との見出しで、次のように解説している。
 ――生活困窮世帯の子どもに無料で学習会を開いているNPO法人「キッズドア」(東京都)は、昨年4月の緊急事態宣言の発令を受け、対面による学習指導の一時体上を余儀なくされた。オンラインでの学習支援を始めたが、支援を希望する高校生以下の保護者に`自宅のインターネット環境″を尋ねたところ、回答があった649人のうちネット回線とパソコンがあるのは34%にとどまった。/ネット環境がない子どもには、分からない問題を携帯電話で撮影して送ってもらい、電話で解説するなど試行錯誤を続けたが、家庭にネット環境がない高校2年生は「お金がない中で大学進学を目指し頑張ってきたが、体校で勉強する環境の差が開いたように感じる」とこぼしたという。この「キッズドア」の渡辺由美子理事長は「『将来、親を助けたい』『社会に貢献したい』と努力してきた子が努力ではどうしようもないところで置き去りにされた。国はそういう苦しさ、悲しさを知った上で今後の施策を考えてほしい」と訴えたという。渡辺理事長は、また次のように述べている。(10年以上の活動を経ても、日本の子どもたちが成長する社会が良くなったとは言えません。むしろ悪化しています。虐待で幼い命を落とす悲しい事件は後をたちません。いじめによる子どもの自殺も「またか」と思ってしまうほど日常になりつつあります。増え続ける不登校、外国にルーツを持つ子どもたちは学ぶ機会が奪われたまま放置され、地毛証明書を筆頭に子どもの人権を損なうような校則など一時代と逆行して厳しくなる生徒指導に苦しむ子どもたち。子どもの貧困が少しましになっても、そこに苦しむ子どもたちがいることを知ってほしい―『キッズドア』のHPより)子ども受難の実態はより深刻になっている。
 さらにこの日の毎日新聞の記事には、次のような実態が報告されている。
 ――三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年(2020)6月、小中高生がいる2000世帯に実施したアンケートでも、世帯所得による差が鮮明になった。一斉体校中に子どもの集中力が「かなり低くなっている」と回答した割合は低所得の世帯ほど高い傾向にあり、匿帯所得400万円未満では生活習慣が乱れる傾向もみられた。家庭でカバーし切れない状況がうかがえる。小林庸平主任研究員は「学校は学習、課外活動、給食などをあらゆる層に提供してきた。それを家庭で埋められる子どもとそうでない子どもがいる。学習内容の理解が追いつかない子への個別補習を学校がするなど、それぞれに伴奏する支援が必要だ」と指摘する。――
 安倍晋三首相(当時)が「全国一斉休校措置を発出します」と宣言したとき、どういうことが彼の頭の中にあったか、今となってはおそいが、訊ねてみたい。「宣言」さえすれば、政府の役目は終わるのか。呑気なものだね、「ハハ、呑気だね」という呑気節でも歌って終わりにできるのが首相であり、国会議員なのだ。この3月23日の毎日新聞の記事の最後は、次の内容で終わっている。
 ――今後も感染症や災害で体校を余儀なくされる事態は起こり得る。(立教大学の人材開発・組織開発を専門とする)中原淳教授は「緊急事態下でも損害を最小限にとどめながら事業を継続するための『BCP』(事業継続計画)の策定は民間企業では当たり前だが、教育業界はそこがとても弱い。学びを再びとめないために、あの時起こったことを検証し、国や自治体・教委、学校の役割分担を今一度しっかり整理すべきだ」と提言する。(――そして、今になって、この記事の最後にはつぎの記述がなされている。)
 ――文科省は今年1月から、一斉休校の影響を調べている。対象は、抽出した国公私立の小中学校計約8000校の校長と計約800校の小、中の児童。生徒及び保護者など。秋ごろ、同じ対象者を追跡調査し、専門家の分析をとりまとめた最終結果を21年度中に公表する予定――
 言うまでもなく、子どもたちは日々成長変化する。一斉体校措置をとれば、どういう事態が惹起されるか、それなりの予測をしてかからなくては、実施などできないはずだ。それを後手にまわし、犠牲になるのは、子どもであり、その家庭である。「責任」をだれが取るのか。〔しもはしくにひこ記す〕

 ※ここまでは、今から言えば一昨年の記事を中心に引用しながら、問題点を明らかにしようと試みてきた。以来、1年半以上が経つ。コロナ感染症も「デルタ株」から「オミクロン株」に移っている。第5波で感染者。重傷者が大幅に減っていた(特に大阪は)が、今や2021年末から再び増加に転じ、今や第6波の感染者が軒並み倍増、最多感染者を記録し続けている。再び、三度、「まん延防止措置」が全国に拡大していっている。
 同じことの対策が繰り返される中で、自治体の長もその有効性に疑間を感じ、自信無げに、うつろな顔してマイクの前に立っている。大阪府の吉村知事の顔色がさえない。言葉つきも、弱弱しい。
 では、こういった時、市民はどう過ごしていけばよいのかだ。新年に入り、2022年1月12日の毎日新聞が「社説」で、次の大きな見出しで述べている記事に注目した。


再生'22 コロナと文化芸術
若い世代の胎動支えたい

 貴重な提言をしているとわたしは考えて、全文を写しておきたい。
 ――新型コロナウイルス禍で、文化芸術は大きな打撃を受けた。/アーテイストが観客と同じ空間で創り上げる音楽や演劇、伝統芸能などは、公演の中止や客席数の制限が長引き、活動の維持が困難になった。
 昨秋以降、状況は改善しつつあったが、オミクロン株の感染拡大で先行きは不透明だ。/外出自粛の中で「不要不急」のレッテルを貼る動きもあった、だが、心揺さぶる作品は人々に生きる希望を与えてくれる。失いかけたことで、かけがえのない存在であることが再認識された。
 新しい時代の到来を予感させる胎動もある。それを実感させたのが、昨秋のショパン国際コンクールだ。
 予選段階からファイナルまで、参加者全員の演奏がライブ配信され、世界中の聴衆を魅了した。/コロナ下で音楽配信を楽しめる環境が整ったことも大きく影響した。芸術が閉塞感を吹き飛ばす力になった。
 ネット配信で若者開拓
 51年ぶりに日本人最高位タイの2位になった27歳の反田(そりた)恭平さんは、ピアニストの枠を超えた活動でも注目を集める。/コロナ禍に対応して、いち早く演奏会の有料オンライン配信を始めた。昨年は自身がプロデュースするオーケストラを株式会社化した。いずれも若い音楽家の生活を支えるための取り組みだ。
 世界からアーティストの卵が日本に学びに来るような音楽の学校を作るという夢も抱く。/背景には、観客の高齢化が進むクラシック界の将来に対する危機感がある。本も読まなければ、テレビも見ないスマートフォン世代の若者に、どうクラシック音楽の魅力を伝えるか。心を砕く。
 26歳の角野(すみの)隼人さんは、コンクールでファイナル進出こそ果たせなかったが、演奏の同時視聴数が過去最高を記録した。登録者数が約90万人という人気ユウチュバーでもある。/ネット交流サービス(SNS)を積極的に使って発信する若世代が変革の担い手となる。一方で、作品を生み出すリアルな場所の価値も再確認する動きもある。
 東京。下北沢に八つの拠点をもつ本多劇場グループは昨夏、新宿に新劇場をオープンした。総支配人の本多慎一郎さんは「劇場があることで人が集まる。街の魅力も増す」と語る。/コロナ下の窮余の策として、無観客の劇場からライブ配信もしてきた。観客をつなぎ留め、遠隔地のファンを開拓する効果はあるが、あくまでリアルの醍醐味にこだわっている。
 若いアーティストや現場を支える人たちの努力は心強い。ただ、それだけで全体を底上げするのは難しい。
 英国における芸術支援に深くかかわった経済学者のケインズは、芸術家を科学者や実業家の上位に位置づけた。芸術は社会をより良くする可能性があり、公共性が高いとの考えからだ。/コロナ下で生まれた新しい動きを支え、文化の多様性を守るためには、公的支援も必要だ。
   心癒やし知を育む価値
 注目されたのがメルケル前独首相の演説だ。在任中の一昨年5月、「文化が表現するのは、私たちであり、私たちのアイデンティティーだ」と訴えた。その信念は、芸術家への緊急支援など手厚い施策となって表れた。

 岸田文雄首相は就任後の所信表明演説の中で、地域の文化や芸術への支援強化に短く言及したに過ぎない。
 「肉体だけでなく精神を衰弱させている」コロナ禍にあって、文化芸術は「精神の抗生物質」である――。富山県から世界へ演劇を発信する演出家の鈴木忠志さんは、そう指摘する。/立て直しのため国や自治体は「コロナ後」を見据えて政策を打ち出す必要がある。芸術を支えることが人々や社会を支える。そうした意識こそが求められる。
 21世紀の世界は、テロや災害、難民、気候変動、差別や貧困といった難題に直面している。/人々は文化芸術を通じて、他者の境遇や人類の未来に思いを馳せる。選び取るべき道を探る一助にもなるはずだ。
 芸術は心を癒やす。同時に、困難な時代を生き抜く知の力を養ってくれる。(その)大切さを改めて認識する年にしたい。
                  ○
 この社説は、コロナ禍にあって「出色」の論説だ。メルタル前独首相の発信力は政治的立場をこえて素晴らしい3~日本の政治家で、政権側であるかないかを問わず、一国の代表からは聞こえてこない思索から出ている。
 また、あの資本主義経済を基礎づけたケインズが、「芸術家を科学者や実業家の上位に位置づけ」て論じたという箇所にも立ちどまった。もし哲学者。三木清が今に生存しておればと、思わないわけにはいかない。
 社説の後段で述べられている、若者の芸術家のあらたな胎動に、わたしは眼を拓かれる思いだ。ピアニストの反田さんのライブと語りをFM放送で聞いたが、上に述べられていることを、再確認させるものだった。
 「世界からアーティストの卵が日本に学びに来るような音楽の学校を作りたい」という夢を語っていた。彼の年齢を知って驚かぬ人はいないだろう。27歳のこの若さで、いやその若さだからこそと言い直すべきか。この発想、建設的提言こそ若者にふさわしい。ユーチューバー26歳の角野隼人さんの配信活動も目を剥くばかりの反響を呼んでいることがわかる。いずれも、このまま「老人に任せておけば、今後の音楽界の将来は暗い。現今の若き芸術家を支えていかねば」という決意こそが、年寄りでは発想できない新鮮さ、大胆さを感じ
させる。
 それだけに、「スマホ病」にとりつかれ、四六時中スマホをのぞき、時間つぶしをしている現代人に対する警告として、わたしはうけとめたい。新聞も本も読まない若者に将来を託せるだろうか。それを言う前に、団塊世代ないし、それ以上に年配の人たちが将来不安をかかえ、自衛策ばかり考え、自分なりの手を打つことに懸命になっている姿に、日を向けることが必要だ。でなければ、各レベルの「投票率」の向上は見込めないだろう。そうすれば、政権与党を利するばかりだ。
 政治には政治の論理があるだろうが、このまま推移すれば、政権交代などおぼつかないだろう。
 まずは、文化芸術というもっとも政治とは縁遠いように見えて、根本を支える底力に目をしっかり据えることで、自分なりのポジションでやれることからやっていこう。
 稿を替えて、そうした動きが日々新聞などで報道されていることに目を向け、この稿を書き継いでいきたい。

2022年1月22日


 

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